2024年 9月1日

 週の半ば頃から九州に上陸した台風は、そのまま日本列島を沿うように東へと向かった。それも自転車並みのゆっくりとした速さで、迷走しつつの移動である。普通、台風は偏西風に乗れば一気に速さに弾みがついてオホーツク海の方に流れていくのだけど、今回の台風は偏西風に乗る事も無く、日本列島の中部あたりで熱帯低気圧になっていった。

 こう表現すると、なんとも拍子抜けの弱い台風みたいだけれど、今までに体験した事のない異様な影響を振りまいた台風でもある。まだ台風が九州あたりで迷走していた頃から、関東の南西部には雨を降らせ始めた。おそらく、海の温度や空の温度、風の向きや地形、台風の規模などの様々な要因があって、台風の中心部は九州でも、関東の南西部に雨を降らせる雲を生み出す力が働いたのだろう。

 その雨は木曜日の午後から激しさを増し、災害を各地に招く豪雨になった。いわゆる「線状降水帯」が発生し、まるでその場所には親の仇のように雨を降らせ続ける。藤野もなかなかの降りが数日にわたって続いたので土砂崩れの心配もしたし、実際に市からは避難するように警報もでた。

 ただ、何度も頻繁に雨雲や降水量の数値をネット上で見たけれど、藤野は、微妙に線状降水帯からはずれていたように思う。それでも確かに豪雨だったし、沢の水が溢れて道路に流れ込んだりしたのだけど。

 私が刻々と移っていく雨雲の情報を見ていたのは以下のサイトだけど。

雨雲レーダー

 このサイトでは、小雨は水色や青、大雨は緑や黄色やオレンジ、豪雨は桃色や赤が使われて表示されている。数十分おきにこのサイトを見ていて、藤野の地域は、時々豪雨の桃色や赤の雲が通り過ぎるけれど、おおむね緑や黄色の表示が多かった。それよりも、これは明らかに線状降水帯の真下だなぁと思わされたのが、小田原から秦野を経て、八王子から川越へ至る直線状だった。ここはもう、桃色や赤の表示がずっと張り付くように豪雨が続いていた。もし、藤野がこんな雨に曝されていたら、けっこう酷い被害が出ていたと思う。

 それでも、藤野にも生活に影響を与える事例はあった。甲州街道が相模湖から八王子へ至る峠が通行止めになり、また相模湖の北岸を通る甲州街道も通行止めになった。これで行き場を失った車が迂回路を求めて、藤野の山間の細道に流入した。そんな道には所々、車のすれ違いもできないような狭隘な所も多く、殺到した車で渋滞が発生して混乱をきたした。

 私も車で山道を走っていると、明らかに狭い山道を走り慣れていない他県のナンバーの車が、カーブを曲がり損ねて自分の方にぶつかって来る勢いで迫って来る。そんな車が何台もあった。

 実は私の乗る車も別の被害に遭った。台風で沢から溢れた水が、道路に細かな倒木をばらまいていた。倒木といっても直径5センチ程度の小枝のような倒木だけど。

 そんな倒木を、「まあ、あの程度なら問題ないだろう」とそのまま車で乗り超えたら、タイヤがパンクした。どうも、倒木から突き出た枝に刺されたらしい。こんな事があるから、安易に枝の上を車で乗り超える事はすべきではないのだけど、まあこれは私が愚かだった。雨の中のタイヤ交換はなかなかつらい作業で、以来、少し体調が宜しくない。

 ただこの体調不良には、他にも理由があるのだろう。豪雨続きは確かに山崩れの心配があって気持ちが落ち着かないが、一方で、この数日間は30度にも達しない日が続いた。恐ろしいほどの猛暑に身体を痛め続けて来た身には、この涼しさは快適だったし、同時に今までの夏の疲れが一気に出てしまう要因にもなったらしい。ごろりと横になると、いつの間にか眠りに落ちていて、数時間も眠っていて驚く経験を何度もした。

 体は休息を求めているようだけど、この台風が終わると、また猛暑がやって来るんだろうなぁ。かといって、間髪入れずに台風がまた来るのも困るけれど。

 今回の台風は、自分にとっては妙に恐ろしい印象があった。これは、今までにないタイプの気象現象だな、と。何でも気候変動に結び付けるのはバカの一つ覚えみたいだけど、今までに経験したことが無い猛暑があれば、今までに経験した事のない形の台風だってあるだろう。そして、これからは、こういった「今までに経験したことが無い」気象現象が、これからの日常になっていく。

 確かに、今までとは違う世界に移行したのかもしれない。

 これから、夏の暑さだけでなく、台風も含めて、様々な気象現象の形で、「今までにない」現象に直面し、それに驚かされるのかもしれない。今までにない気象現象が当たり前になると、今までの気象現象を前提として作られてきたもの・・・例えば川の堤防とか・・・が、防災の意味をなさなくなってくる。

 私の杞憂であればそれでいい。ただ、実際にその方向で未来が進んだ時、どこかで、世間が騒ぎ始める時が来るのだろうか。「このままでは暮らせない」と。

 それとも、案外、新しい世界に、無理やりにでもなれてしまうのかな。

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