2023年 5月14日

 この週から雨が降りやすい気候になったらしい。週の半分は、一日のどこかで雨が降るか、もしくは一日中雨が降る。この土日は雨続きで、各地で行われた催し物には災難だったと思う。次の週には陶器市があるが、そういえば、この陶器市はいつも雨に縁があるイベントだった。

 そんな雨も、田植えの準備に関しては大切な恵みの雨。既に田に水を入れて代掻きも終え、田植えも終えている所もあるが、私が参加している田んぼは6月も下旬になってから田植えを行っている。同じ土地で麦と稲の両方を育てようと思ったら、麦の刈り入れまで田んぼに水は引けないからね。ここへきて麦は急に育ちに勢いが増し、実をつけ始めている。ジャガイモは花を咲かせ、麦秋もじきだろう。

 そんな中、藤野で熊騒動があった。5月の6日の夕方ごろ、藤野の名倉地区で、獣害駆除のための罠に、ツキノワグマの子熊が引っかかっていた。子熊がいるという事は近くに親の熊がいる可能性があり、それだけでもなかなか危険な状況だと判る。子熊も親熊も気が立っているだろうし。

 市や県では、罠にかかった熊に関する対応の基準があるらしい。よっぽど人間に対しての危険が明確である場合を除き、熊に人間の恐ろしさを覚えこませて(どういうことをするんだろう?)、また山に帰すのだとか。気の毒だけど、今回は返すべき山が見つからなかったとかで殺処分となったとか。

 しかしなぁ、年を追うごとに、獣害の問題が増えて行くな。20年も前なんて、藤野に熊の情報なんて滅多になかったものだったが。イノシシや鹿同様に、平然と里山に降りて来るようになってきた。これはもちろん、人間の勢いが弱くなって、その空白に野生動物が入り込んできた事でもあるのだが。

 イノシシだって、以前は滅多に人家の在る所には降りてこなかった。畑をやるのでも、柵なんて必要がなかったものだ。柵なんてなくても、平気でジャガイモやカボチャを育てていたもんだけどなぁ。今じゃ柵無しではとても畑なんてできやしない。

 イノシシには笑い話みたいなものがあって、「あいつらはカレンダーを持っているに違いない」というもの。猟が解禁になるとピタッと姿を消し、猟期が終わり禁猟になると翌日には姿を現す。しかし今では、猟期でも人家に降りて来るからな。自分が藤野に来た頃は、禁猟の時期でも里には降りてこなかった。それだけ人間の恐ろしさが染みついていたのだと思う。

 ただ、このような獣害の深刻化を見ていると、こういった現象って何も獣害だけではないんじゃないかと思うことがある。高度経済成長期に伸び盛りを迎えたこの国は、やがて停滞期を迎え、今は(少なくとも人口に関しては)縮小期に入っている。それまでの勢いを無くし、守りに徹するようになり、やがて守りすらできなくなっていく・・・そんな流れの中にいるのではないかと。

 職場では若者の姿が消え、学校では子供たちが消え、維持できなくなった家やマンションは廃墟化して取り壊され、かつて繁栄していた町も縮小していく。それでも政府にできるのは増税と物価高で、縮小の勢いを更に加速させていく。藤野でいつの間にか安心して畑ができなくなってきたのと同様に、安心して出来ることが少なくなっていく。

 こういった縮小の流れも、いつかは行きつくところまで行きついて、反転して再び攻勢に出る時が来るとは思う。たぶん、そんな時代の主役になる人達というのは、自分で考えて試行錯誤と実践を重ねて、知恵と経験を身に付けた「腕に覚えのある人」なんだと思う。

 普通、そういった人たちというのは若者だろう。一つ懸念があるのは、日本全体で見てみると、若者の数よりも老人の数の方がずっと多い時期が続くということだ。なんか、やる気のある若者にたいして、ずっと規模の多い老人・・・それも未来に対して意欲を失った老人・・・が、「もうわしらは駄目だ、今さらやる気を出しても無駄だ」と、否定的な空気を垂れ流す事になりやしないか。

 これは仕方のない事でもある。若者に対して、高齢者になると、何か新しい事に挑戦するよりも、現状維持ができるだけでも良い方で、それまで出来たことが出来なくなっていく事に嘆く機会も増えて行く。これから、高齢者の心のケアの問題は、大事になっていくと思う・・・って、私だって他人ごとではないが。

 あまり、若者にネガティブな空気を垂れ流す存在にはなりたくないなぁ。勿論、限界はあるにしても、常に、何か新しいものに対して興味は持続して、楽しい事を見つける生き方は続けていきたいものだ。

 昔は、腕に覚えのある若者が、そのまま年を重ねても、若者にとって大事な指導役になる「長老」としての役割も担うことが多かったが、これからの時代はどうなるだろう。あまり、そういう長老的な高齢者を見かける機会はすっかり減ったような気がするが、私の周りにはいないだけかしらん。いる所にはいるのかな。

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