2023年 4月30日

 山はすっかり夏色。どこまでいってもどこまでいっても緑の山。生命力にあふれる光景だけど、どこか単調な気もする。そして、個人的にはどこか自然に対する怖れを感じさせる光景も、この時期の山の姿だ。なんか、あの山も、そのまた向こうの山も、すべての山が緑に覆われるというのは、何か神がかった異変によって時が止まってしまったかのような、不気味な印象がある。

 この時期の植物に色彩が乏しいのにも、私がそう感じてしまう理由があるのかもしれない。花が咲き乱れる春と違って、この時期の山の木々は、花も咲くことは咲くのだけど、地味な白っぽい花がなぜか多い。紫色の藤や桐は例外的だ。ミズキとかアオダモとかヤマボウシとか、なんでこの時期の木の花は、白っぽいものばかりなんだろう。何かしらの理由があるのだと思うけれど。

 これが、もう少し夏に近づくと、紫陽花とかタチアオイとか、鮮やかな花を目にする機会が増えて行く。

 ミズキといえば、ここ数年、上の写真のように花を綺麗に見る事は少なかった。葉っぱが出そろった時から毛虫に食べられ尽くされ、すべてのミズキの木が、かろうじて葉脈だけを残して丸裸にされることが多かったから。一度葉っぱを食べ尽くされて、もう一度力を振り絞って二度目の葉っぱを出しても、たちまちそれも食い尽くされていた。

 これではミズキは絶滅してしまうと心配になるほどだったけど、昨年あたりから、そこまで酷い食害には遭わずにすんでいるみたいだ。普通に予想される事は、あまりにもミズキの葉っぱを食べる毛虫が増えすぎて、今度はその毛虫を食べる鳥が増えるようになり、結果、毛虫にとって増えずらい環境になったのではないか。この想像が当りだと、次は毛虫が減ったために鳥の食べるエサが少なくなり、また鳥が減ってしまい、そこで再び天敵の減った毛虫が数を増やし始める・・・という波が、数年後に来る事になる。

 まあ、判らないけどね。ただ、自然界には、いろんな形のムラというか、波があるのは確かなのだろう。

 そういえば、ここ数年、津久井の山でもナラの木が枯れる事例が増えている。カシナガキクイ虫という虫が増えて、次々とナラの木を枯らしているらしい。津久井の山の全域で、夏の山の木々の中に、秋でもないのに紅葉しているような木々が目立つようになった。それはナラの木の枯れ始めで、いずれ弱って枯れてしまう。

 ただ・・・、これは私の誤解かもしれない、単なる見間違えかもしれない、これから夏が本格化すれば、また秋でもないのに紅葉したようなナラの木が出始めるかもしれない・・・が、なんか今年の山は、あまりナラ枯れの影響を感じるような光景に出くわしていない。もちろん、夏本番になってから現れる現象かもしれないが、こういう事例にもムラはあると思う。

 一番実現して欲しいムラというか波がある。かつては藤野の山では見る事のほとんど無かったヤマビルが、いまでは山にうようよとはびこるようになって、春から秋までの山や草むらには、うっかり足を踏み入れるのも怖くなるようになってしまった。これが、波が引くように、またヤマビルがいない山に戻ってくれないものかな。

 前述のミズキと毛虫の例で言えば、毛虫が増えれば毛虫の天敵の鳥も増えて、結果また毛虫が減る波が来るように、ヤマビルも増えれば増えるほど、ヤマビルの天敵も増えてくれるはずだ。その結果、ヤマビルが減る波もあってよさそうなものだが。

 ただ、いろいろと調べてみたけれど、ヤマビルって、あんまり天敵らしい天敵って、いないみたいなんだよなぁ。そりゃあ、ヤマビルを捕食する生き物もいる事はいるけれど、あまり積極的に食べたいと思うような生き物ではないみたい。

 ヤマビル自体の天敵に頼れないとなると、次はヤマビルを拡散する動物を減らす事で、ヤマビルを減らす波を作れないかと言う考えになる。ヤマビルを拡散する生き物の最大の存在は鹿とイノシシで、この二種類でヤマビルの拡散の原因の大半を占めると言う。もちろん、狐とか狸とか、他の動物でも拡散はしていると思うけれど。

 特に鹿は蹄にヤマビルがいて、鹿の歩くところには必ずヤマビルをばらまくので始末が悪い。

 結局最後は、波は人間が起こさないといけないという話になって来る。昔は鹿やイノシシなんて、かっこうの猟師の標的で、鹿もイノシシも人を恐れて人里には下りてこなかった。それが、人の力が衰退して、人里でも鹿やイノシシが我が物顔でうろつき回る波が来ている。まずはこの波からなんとかしなくちゃなぁ。

 鹿やイノシシを食用にしようと言う話は時々出てくる。なかなか実らないが。

 皮を使おうという話もあるようだ。ただ、こういう動画を見ると、たとえ野生の生き物の皮が手に入っても、そこから革細工を作っても、お高いんだろうなぁ。とても丁寧な職人の仕事だけど、庶民の手に届くだろうか。

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