特にこれといった寒の戻りもなく、順調すぎるくらい順調に春は進んでいく。桜の開花も早いそうだ。普通はサクラの開花はもっと後の4月に入ってからで、また桜の咲く頃に急に寒くなって雪が降ることだって普通だったんだけどな。やはり、温暖化は進んでいるのだろうか。
彼岸の入りで、これから雨が続くそうだ。
寒さの戻りが無いというのは、私には逆に不安になる。こんな季節の巡りがあっていいのだろうか、という不安が。もちろん、ジャガイモを育てている人にとっては、せっかく出たジャガイモの芽が霜にやられる事も無いし、ハクモクレンの花が霜にやられて茶色く萎れる事もないわけで、いいことづくめのようでもあるわけだけど。なんか私には、寒くあるべき時はちゃんと寒くないと、別の悪い事が起こるんじゃないかと思ってしまう。単なる心配性といえばその通りかもしれないが。
年度末になり、これから自治会の総会が控えているが、その前に地区会の集まりがある。篠原の自治会は、篠原の中に三つの地区会と、牧馬の地区会の合わせて4つの集まりなので、自治会の総会の前に、それぞれの地区会でも話し合いをして、要望やら問題点などを話て自治会に挙げていく。牧馬でもいろいろと課題が浮き上がった。
その課題の一つに、牧馬の水は今後大丈夫かという話が合った。牧馬地区は水道が無く、それぞれの家は、沢からホースで水を導ている。ただその沢の水量の低下が、不安になる感じになってきた。かつては冬でも枯れない沢の水が、枯れるようになってきた。
この原因を地元の人は、山の上の木々を、みんな桧の植林にしてしまったせいではないか、と考えている。実際、最もありえそうな理由だと思う。昔は針葉樹の植林ではなく、広葉樹や照葉樹林の森が広がっていた山だったのだろう。そういう山の方が保水力はあるはずだ。
かと言ってなぁ、いまから桧を伐り倒して広葉樹の苗を植えると言うのもな。これはこれで問題解決にはならず、かえって問題を悪化させるだろう。
あとまあ、これは余談になるけれど、よく、「針葉樹だらけの植林は保水力が弱くなり、土砂崩れの原因になるし、野生動物の棲みかとしても不適切なので、もっと自然な山に戻すべき」という意見がある。私も、おおむね、正しい方向性だとは思う。
ただねえ、針葉樹、それも特に杉の素晴らしさというのも、在るんですけどねえ、と強く思うのです。
まあ一度でも、広葉樹と杉とで、実体験として比較をしてみるといい。山で伐採する時の楽さ、伐採した後、山の麓まで降ろす作業の楽さ。一度広葉樹で同じことをすると、杉は本当に楽だと感じる。
また製材のしやすさ、乾燥のしやすさ、加工のしやすさ、加工した後の変形のない安定感とか、いずれも広葉樹の比ではない。一度広葉樹で伐採から製材から乾燥から加工までやってみると、杉と言う植物が、まるで神様が人間に対して与えてくれた、最高の素材に思えてくる。花粉症の事もあって杉は嫌われ役みたいになってしまったけれど、これくらい有難い木ってないんだけどなぁ。
ちなみに、杉と桧の違いの一つに、薪を作る時に「スパーン」とまっすぐに気持ちよく割れるかどうか、というのがある。杉はまっすぐに割れるけれど、桧はそうじゃない。桧って、らせんを描くようにねじれるように育っていて、斧をおろしてもねじれるように割れてしまいます。似たような針葉樹だけど、いろいろ使っているとこんな違いも判って面白い。
こういう経験って、実際に手足を使って木と取り組んでいる内に判ってくるのだけど、「針葉樹の植林だらけの山を、自然の山に」と主張する人は、頭だけではなく、体で木々の事を、どれくらい知っているのだろう。
頭だけの自然保護、環境保護の主張というのは、私には何か危ういものを感じさせる。実際に山に入って、手足を使って、木のとげが刺さったりヤニが服についてベタベタが取れなかったり、おがくずにまみれたり加工に苦労したりと、そういう身体を使った実体験がある人でないと、きちんと形になった、自然に優しい山の姿を取り戻すのは難しいのではないか。
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