2022年 11月20日

 前々回、前回と続いて、同じケヤキの木の写真。このケヤキはすっかり葉を落とした。徐々に山は茶色になっていく。こんな時でもなかなかじぶとく紅葉もせず落葉もしない木に、桑がある。これも落葉樹なので、いずれ葉を落とすのは間違いないのだが、他の木々が冬に向かって動いているのに、一人気を吐いているみたいで面白い。

 春の新芽が出るのも、木によってずいぶん時期が違う。早春の梅も咲かない時期に目を出すのもあれば、5月の連休頃になっても目を出さないものもある。おそらく、それが、それぞれの植物にとって最も相応しい時期なのだろうけれど。

 ケヤキと言えば、先日、十分に乾燥したケヤキを薪にするためにチェーンソーで切ったのだけど、いやはや硬いのなんの。作業中に何度も刃を研いでないと、たちまち切れ味が落ちる。やっぱり薪を作るのなら、まだ柔らかい生の状態の木じゃないとね。ケヤキと似たように、乾燥してやたら固くなってチェーンソーが音をあげる木に、ニセアカシアがあるな。ずっしりと重い木だけど、これも乾燥して固くなると石みたいになる。

 ただケヤキって、確かに硬い木だけど、一度乾燥して固くなったら、そこから先は柔らかくなる一方なんだとか。これが桧になると、伐採されて乾燥して固くなってからが本番で、そこから千年かけてより固くなっていくそうな。

 築百年の古民家の桧の柱なんて、そのままではインパクトドライバーのビスが入らないほど固いからね。

 結局、チェーンソーの刃は新しく買い替えた。もうけっこう使っていて、何度も刃を研いできたし、刃はすっかり小さくなっていたから限界だった。刃を替えに新しい刃を買おうと店に行ったら、自分のチェーンソーを見て「ガイドバーも変えた方が良い」と言われた。まあたしかに、これもすっかりすり減って痛んで来ていた。

 山暮らしって、いろんな道具が必要になるけれど、それらの道具のメンテナンスも出来る必要がある。薪ストーブをやるならチェーンソーが必要になるし、チェーンソーが必要になったら、少なくとも刃の目立ては自分で出来るようになる必要がある。まあ、薪はすべて金で買うというのなら構わないけれど。

 自然の中で、自然と調和して暮らしていくというのは、そこの人々に技能の習熟を求める事柄が、すごく多い。ある程度は腕に覚えのある人でないとね。

 ただ最近、この傾向は、もしかしたら山に暮らす人間だけではなくなって来るかもしれないな、と思うことがある。

 話はずれるみたいだけど、歴史上、人類に急にフロンティアが拡大する時がある。ある時は農業に目覚めた時だったり、ある時は金属器を手に入れた時だったり。近い年代では産業革命が起こった時とか、市民が車とか家電とか使うようになった時とか。

 で、一番最近のフロンティアの拡大は何かと言ったら、コンピューターの進歩による、ネットワーク社会の発展だろう。これは誰もが同意してくれると思う。ただ、どうもこのフロンティアの拡大も、そろそろ峠を越えて成熟期に入り、これまでのように急拡大する時期は終わったのではないかと、私は感じるようになった。なんか、その方面の大企業の話も、あまり活気の良い話は聞かず、人員整理の話を聞く機会の方が多い。

 どんなフロンティアの拡大だって、爆発的に拡大する時もあれば、内容が陳腐化して終わりを迎える時もある。まあ仮に、私の印象が正しいとして、じゃあ情報化社会の次のフロンティアって、何だろうと言う話になるのだけど。

 なんか私には、それが素人と玄人の中間、プロとアマチュアの中間の人材が世にあふれる事なんじゃないかなぁ、と漠然と思うのです。ハイアマチュア、なんて言葉もあるようだけど。

 プロの大工じゃないけれど、簡単な家の補修や改造なら自分でやっちゃうとか、自動車の整備も自分でできちゃうとか。つまり上述した「腕の覚えのある人」が活躍するのが、次のフロンティアになるんじゃなかろうか。

 今は副業を認める企業も増えたそうだから、年収の何割かは、そんな「腕に覚えのある」副業になるのも、珍しい事ではなくなるかもしれない。

 これは、うかうかしていると、それまで本業で「プロ」を自認していた人が、急激に増える「ハイアマチュア」に仕事を奪われる可能性もある未来だ。でも私は、それは決して不健全な事ではないと思っている。

 プロとアマチュアしかいない状態って、アマチュアはプロのどこが凄いのか理解できないし、プロはプロで、「どうせプロの仕事はアマチュアには判らないだろう」と仕事で手を抜く悪徳のプロも生まれやすい。

 プロとアマチュアの中間が充実している世の中は、真に尊敬されるプロは、ハイアマチュアにも尊敬されるプロだろう。またアマチュアも、「あのプロはほんとにすごい」とハイアマチュアが言う時は、その言葉を素直に信じると思う。

 これは、健全な状態だと思うのだが。

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