2020年 10月4日

 金木犀の香りが漂い、コスモスが秋風に軽やかに揺れている。山の景色は一見、夏のままに見えるが、所々に色づいた木々も出始め、風とともに葉を落としている。陽が陰るのもだいぶ早くなった。山里の暮らしは、家の周囲を山が高く囲んでいるので、太陽が山に隠れるとたちまち肌寒く、薄暗くなって行く。平地に比べると、洗濯物や布団を干せる時間は、ずっと短い。

 相模原市が「気候非常事態宣言」というものを表明したそうな。これから、気候変動に備えた政策を行っていくつもりらしい。昨年の台風被害も、この宣言に影響を与えたのだろう。とりあえずの具体的な目標は、豪雨や猛暑等の被害から市民を守る事と、省エネ、再生可能エネルギーの推進、森林の整備と再生による、2050年の二酸化炭素排出量実質ゼロを目指す。

 思えば、私が牧馬に越して来た20年以上前の頃は、10月にもなれば、山に陽が隠れて里が日陰になると、セーターを着てても寒くなるくらいには冷え込んだものだ。夕方にもなれば、更に厚手のジャンパーなり外套なりを着込まないと、寒くていられないほど。

 その頃から10月に始まった篠原のイベント、「ぐるっとお散歩篠原展」は、夜になっても屋外でコンサートとかやってたが、焚火や炭火のそばに集まらないと寒くてかなわず、ホットワインが飛ぶ様に売れたのを思い出す。しかし、今は夜になってもそれほど冷え込まない。

 確かに気候は変わった。同じ10月初旬でも、20年前とはだいぶ違う。

 二酸化炭素の削減の方向性は、世界全体を見ると、けっこう過激な所がある。自動車は、熱効率がよほど良くないとエンジン式は生産も出来なくなり、いずれ内燃機関の車はハイブリッドでもないと生き残れないだろうし、アメリカのカリフォルニア州では2035年からはエンジンで走る車自体の販売禁止の方針を出した。もう電気自動車以外は作るなという事だろうか。

 個人的には、果たしてそんな勢いで、石油で走る車が無くなってしまうのかなぁという疑問もある。特に山里に住んでいると、車以外に石油を使う道具を多く使う機会があり、そう簡単に「脱炭素社会」なんてできるかなぁと思うのだ。そりゃあ、草刈り機、チェーンソーから耕耘機に至るまで、電動式も販売はされているけれど、まだまだガソリンエンジンの方がパワーもあるし、長時間、長期間の使用での信頼性もあるからね。

 一方で、そんな自分の印象とは別に、一度流れが出来てしまうと、どんどん電化へと転がり進むかもしれない、という気持ちもある。

 さっき、「山里に住んでいると、簡単に電化が進むとは思えない」と書いたけれど、逆に山里に住んでいると、「一気に電化が進むのではないか」という思いが沸く例もある。その一つの理由が、ガソリンスタンドの減少だ。

 石油を燃料として使う以上、石油を山里まで運んでこなければならない。それが電気になると、電線を引いて給電設備を設置すれば済んでしまうし、自宅での充電も可能だ。ひとたび、電気自動車が増え始めれば、既存のガソリンスタンドの経営は縮退の方向に向かう。人口の少ない山里では、自治体の助成でもないと維持できないガソリンスタンドだって出来てしまうだろうし、実際にそんなガソリンスタンドが既にあるのではないか。

 そんな流れでガソリンスタンドが一つ減り、二つ減りしていくうちに、内燃機関の車の利便性はどんどん減っていき、人口の少ない地域は、ガソリンを補給するのに何十キロも走らなければならなくなり、電気自動車しか選択の余地が無くなってしまうかもしれない。これだって、十分にありそうな未来ではある。

 この辺り、どうなるんだろうなぁ。フィルム式のカメラがあれよあれよという間にデジタルへと置き換わった様に、車も電化が一気に進むのだろうか。それとも、内燃機関の車も、しぶとく存在し続けるのだろうか。

 この問題、それぞれの国、それぞれの自動車企業の思惑が複雑に入り交じり、なかなか「未来はこうなる」という決定打は見えて来ない。自動車を作っている側だって、今の技術力と資本力を、どの分野に集中するべきなのか、確信が持てているわけではないんじゃないかしらん。

「次は電気の時代だ」と設備投資を電気に集中しても、案外、内燃機関の時代が長続きする可能性もあるし、かといって、下手にエンジンにこだわりすぎて電気自動車の波に乗り遅れる可能性もある。判断と決断いかんで、繁栄か転落かが決まって来る。当事者は胃が痛くなるような立場だろうな。

 ただ、5年先、10年先は判らないけれど、20〜30年先となると、どんどん電気自動車の時代になっているかな、とも思う。今はまだ電気自動車は高価だが、技術の進歩で安価になっていくだろう。エンジン式の自動車と同価格になる日も来るに違いない。そうなると、走るのに使う石油代と電気代では、石油は電気に対して勝負にならない。

 未来はどうなるんでしょうね。移動手段が、ただ同然に安価になる時代になるのだろうか。

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